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鋼の詩(はがねのうた)1 ~ロングソード~

さて、今回から不定期に変な物語が始まります。
舞台はよくある中世ファンタジー、大きな波乱も冒険もない。
武器のコラムをやりたいがために展開される小話です。

※この物語はオノマトペを多用した作りになっているので、
 人によってはわかりにくかったり、ビジュアルイメージがしにくいかもしれません。

「物語はどーでもいい」という方は、武器コラムだけでも読んでみて下され。

【鋼の詩(はがねのうた)

 そこは城塞都市メタトロンの外にある街道沿いの小さな武器屋さん。
 小さいながらも溶鉱炉から、鉄床(かなとこ)まで一通りそろった、鍛冶場を兼用する武具店です。

 そこには はしこく動く小さな人影がありました。
 このお店で専任鍛冶職人として勤めるドワーフ族の少女、名はナナ=メッサーシュミートといいます。

 ドワーフ族なので身長は低く130サンチ足らず(約1.3メートル)。
 お店のカウンターに立つと首から上しか見えないくらい小さな少女です。

「これは小さな鍛冶職人の武器にまつわる物語。
 誰かの命を守るため、そして誰かの命を奪うために作られる、力強くも悲しい鋼の物語。」



【変わりゆく武器 ~ロングソード~

 ガィン、ガィン、ガィン。
 いつも通り作業場で仕事をする私、響き渡る軽快な槌の音。
 今は成形の最終段階。もうすでに「剣」と呼べるまでに形を成した鉄塊が鉄床で赤く弾けている最中です。
 音はうるさくも不快ではなく、私はこの音がたまらなく好きなのでした。
 鍛冶屋はまさに私の転職なのです!にへら~(´∀`)

「ナナちゃ~ん、そろそろお昼にしましょ。」
 不意にお店側に続くドアから人が顔を出し、私が立てる音に負けじと声が飛んできます。
 このお店【武器屋 古兵(ふるつわもの) ~ニャンコ店長の店~】の売り子店員であるレイさん。
 明るく、武器の知識にも精通していて、笑顔がまぶしいおねぇさん。(当然私より年上です!)
 その顔には、私たちドワーフ族の手による 自慢の視力補助器具『眼鏡』がいつも光っています。
 そう…文字通り、このお店の『看板娘』なのです。

「は~い。これ、もう終わりますから!」
 そう答えて 私は最後の一槌を打ち込むと、金鋏でつかんでいる刀身を脇の水槽へと突っ込みます。
 ぢゅっわっ。
 焼けた鍛鉄が悲鳴を上げ、急速に冷やされるこの瞬間もまた、たまらな~い瞬間なのです。
 にへら~(´∀`)

 上半身は殆ど裸同然。汗だくの体を軽く拭き、着替えた私は奥のキッチンへと移動。
 私の仕事場である鍛冶場はお店の脇に半開放式でつながっているのです。

 店の奥となるダイニングキッチンのテーブルには、いつものようにレイさんの手料理が並んでいます。
 今日はヅダ麦のパンと、お店の裏を流れる小川で取れた雑魚のグリル。
 朝にマーケットで仕入れてきたらしい生野菜のサラダ。
 毎度おなじみの質素な昼食です。私の好物であるお肉は めったに食べられません。グスン。

「仕事の進み具合はどう?」
 席に座った私に、レイさんが固いパンを千切りながら聞いてきます。
「今寝かせている1本を含めて、後3本ですね。3日後には仕上げちゃいますよ~。」

 私の立場は、このお店の雇われ鍛冶職人。このお店の武器全てを私が作っているわけではありません。
 お店の大半を占める高価な品々は、ニャンコ店長が独自で入手してくるもので、領主様などから発注される量産品製造が、私の主な仕事なのです。
 たかが量産品と言っても 私の武器の評判が、このお店の売れ行きを左右することにもつながるので、気が抜けません!

「相変わらず仕事が早いわね~、助かるわ。」
「このお仕事好きですから!」 にへら~(´∀`)

 そこに表側からザワザワと大勢の人の声。
 入り口の扉に『昼食中』の掛札が出ているはずなので、急ぎのお客のようでした。

 カラン、カラン。
「たのもー!」
 案の定、休憩中にも係わらず不躾な訪問です!
 レイさんがすぐさま反応しました。「は~い、ただ今~。」
「ちょっと行ってくるわね。」
 レイさんは小声で私に言うと、お店の方へと消えていきます。
 しばらくは込み入った話をしている風でしたが、そのうちレイさんのあまり聞かない あわてた声が飛んできます。
「そんな!それは困ります!」
 気になった私はお行儀悪く思いつつも食卓を離れました。

「どうしたんですか?」
 お店側をひょいと覗くと、そこには鎧を着た兵隊さんの一団。
 一瞬何事かと思いましたが、よく見ると いつも注文をくれるメタトロン領主お抱えの兵隊さん達です。

「おう、譲ちゃん!いいところに来た!」
「はい?」
 わけがわからない私の顔は疑問系。
 そもそも顔見知りとはいえ、裏方である私に話など 普通はないはずです。
「皆さんがちょっとね…。」
 レイさんの困った顔、なにやらトラブルのようです。

「今注文を出している剣だが、注文分をキャンセルして、もっと刀身強度を上げた物にできないか?」
 部隊長の無茶振りです。
 私はまだまだ未熟者、今以上の出来の量産品は作れません。
 一品物の渾身作ならともかく、量産レベルのもので 今以上の出来出など期限内ではとても出来ません。
 しかも承った注文分の9割、27本はすでに仕上がってしまっているのです。
 製作に入ってからのキャンセルは基本契約違反ですし…。

「そ、そんな無理ですよぅ~。」
「すまぬ、そこをなんとか!」
 レイさん同様困り顔になった小さな私に、一団の中でもひときわ大柄な部隊長がカウンター越しに頭を下げてきますが、
私ではどうにもなりませ~ん。

「とにかく詳しい事情を教えて下さい。」
 レイさんが断ち切るように私達の間に入ってきます。
 話はこうでした。

 東の同盟関係にある隣国の領主が、兵士達の訓練も兼ねた交流試合を持ちかけてきたそうです。
 それ自体は何の問題もなく開催されたのですが、1対1の剣技競技で、こちらの代表選手陣は剣をことごとく折られ完敗。
さらに『武器に差がありすぎて試合にならなかった』と、侮辱とも取れる発言をされたそうなのです。

「それだけではありません。『これくらいの武器はそろえたほうがいいぞ』と一振り置いていきやがったんですよ!」
「なるほど…、つまり 交流試合というのは口実で、実質 武器の質の良さを自慢しに来たということだったんですね。」
 レイさんの読みに、部隊長は無言でうなずきました。
「ふえぇぇ…ショックですぅ~。それって私の剣がダメダメってことじゃないですかぁ~!」

「あ いや、譲ちゃんの武器はまだ納入され始めたばかりだから、全員に行き渡ってなくて試合では使ってないんだ。」
 気の毒に思ったのか、部隊長さんが慰めの言葉をつけ加えました。
「ということは…試合で使用したのは先任のゴズルさんが作ったものなのね。」
 レイさんは、私が直接知らない先任者だった老鍛冶職人の名を口にします。
「真面目ではあったけれど、頑固で古いやり方を変えようとしない人だったから、少々時代遅れの品だったかもね…。」

「武器に流行があることは当然わかっておりますが、われわれ下っ端兵士では何が良くていのかよくわかりません。教えてくれませんか?」
「いいですけど その前に、隣国が置いていったという その剣を見せてもらえないでしょうか。」
 レイさんの言葉に部隊長は無言でうなずきました。しっかり持ってきているようです。
 そして部下に持たせていた一本の剣を受け取ると、鞘から抜き放ちました。
 ジャリン!
「これが、その 置いていった一振りです。」
 そう言って部隊長さんは、グリップ部分をレイさんに向けて差し出します。
 レイさんは剣を受け取り、クイッと眼鏡を整えると、無言のまま刀身からキヨン(棒鍔)、グリップ(柄)ポメル(柄頭)と舐めるように眺めます。
 レイさんの得意の『鑑定モード』ポーズです。

「我々の眼でも これまでの量産品とは少し違うこと位はわかります。刀身は薄めで軽いしフラー(樋)もない…、
何より刀身中央に薄っすらとまだら模様が出ている…。しかし、使ったときの違いはわかっても、なぜその差が出てくるのかが
我々には分からないのです。」
 レイさんは応えません。部隊長の言葉を聴いてはいるのでしょうけど、まったく反応せず剣に見入っていました。
 そして…安心したかのように安堵のため息。
「ふぅ…。とりあえず、キャンセルはしなくて済みそうですよ。」
「は?」
 今度は部隊長の顔が疑問系。ポカンと開けた口はゲルグ芋が入りそうな大きさです。

「ナナちゃん、奥からゴズルさんの剣を持ってきてちょうだい。」
「あ、はい!」
 私は奥の倉庫へテテテと駆け込むと、埃の積もった籠から一振りの剣を抜き取り、そのままカウンターまでとんぼ返り。
 持出した剣の容姿は、切っ先は鋭角ではあるもののあまり鋭くなく、刀身は肉厚で幅広の5サンチ(5cm)。
刃はほぼ平行についています。(実際にはすこ~し先細ってますけどね。)
 長さは約90サンチ。刀身だけでも75サンチあり、側面中央には柄元から刀身の中ほどまで 軽量化のための溝フラー(樋)が彫られてます。
 焼き入れのため刀身はやや黒ずみ、刃の部分だけが研がれてギラギラと鈍い光を反射してました。
 キヨン(棒鍔)はグリップ(柄)に対して90度左右に5サンチずつ突き出し、おおよそ大半の人が、『剣』と言われると思い浮かべる典型的形です。
「おお、確かにこちらで使ってるものと同じだ!」
「それはまぁ、ウチがかつて納品していたものですから…。」
 感嘆する部隊長さん相手にレイさんは苦笑い、そして説明を始めます。

「現在、小競り合いの耐えない東部では、武器や防具の革新が起こりつつあるようで、この剣では役者不足になりつつあります。」
「具体的にはどういうことなのでしょう?」
「東部戦線では、金属輪で出来たチェインメイルや金属板で全身を覆う鎧がトレンドになりつつあるのですが……」
「それは私どもも聞き及んでおります。我々も導入を検討しておりますが、コストが高くてなかなか…」
 口を挟んだ部隊長さんを無視してレイさんは続けます。
「こういった鎧には斬撃が殆ど通じません。現地では先端部を細く尖らせ、その切っ先で鎧の隙間を突く戦闘スタイルに変わりつつあるようです。」
「なるほど…東の連中が置いていったこの剣が先へ行くほど細いのはその為か…。厚みも薄いから、こんな剣じゃ 相手の攻撃を弾く時に折れそうだと思ったのだが…。」
「当然相手の攻撃を受ける時は根元を使います。剣を扱っている方ならもともと部位の使い分けはされているでしょうけど、役目がはっきり形に反映されてきたのではないでしょうか。」
 レイさんは東から伝わってくる情報を自分なりに研究し、結論を出しているみたいでした。
 いつもお店にいるのに、どこから情報を入手しているんでしょう…実に不思議です。

「また、材質にも変化があるみたいね。こちらの方はナナちゃんの方が詳しいんじゃないかしら?」
 レイさんと兵隊さん達が一斉に私を見ます。
 私は隣国が置いていったという剣の 刀身にある特長を見つけ、大体その製法を見抜けていました。えへへ。

「あ、はい!え~~っと、ドワーフには古代から鍛造と言う技術がありまして、平たく言いますと『炭素をコントロールする製法』です。」
「タンソ?」
 部隊長が珍妙な顔をします。まぁ、普通の人には分かりませんよね。
「簡単に言えば炭です。」
「炭って、木を燻すと出来るアレかい?」
「大雑把にはその認識で良いと思いますよ。」
 私はさらに続けます。
「鉄と言うものはいろいろな物質を混ぜることでさまざまに変化するんですが、特に炭素の含有量で硬さ・軟らかさが決まります。」
「………………………………。」
 部隊長さんをはじめ、兵隊さんたちは皆、半信半疑の表情。
レイさんだけがウンウンと無言で頷いている状態です。無理もないですけど…。

「炭素量が多いと、鉄は硬く高質化するんですが、強度は脆くなります。この状態の鉄を『銑鉄』と言います。
 逆に炭素量が減ってくると、軟らかくなる代わりに 粘りのある壊れにくい性質の『軟鉄』になります。」
 兵隊さん達は益々いぶかしげな表情をします。話についてこれてるか不安です、大丈夫かなぁ…。

「武器として理想なのは、その両者を兼ね備えたものなんですが、これまでの技術では両立できてませんでした。 これまでの剣の多くは『焼き入れ』と言う技術で剣を焼いて、表面だけを炭化させ硬くしていたのです。」
 私はカウンターに置かれたゴズルさんの剣を手に取ると表面をコンコンと叩いて見せます。

「硬質化しているのは表面だけなので、使用しているうちに硬質層だけがひび割れ 剥がれ落ちていき、最終的には折れると言うより曲がる感じで寿命を迎えるはずです。 試合の剣が曲がらず折れたというのは、ゴズルさんが何らかの加工をしていたのだと思います。」
「そういえば…、我々の剣は折れると言うより砕けるような破損の仕方をしていたな…。」
 部隊長さんが思い返したように言いました。
「私から見ても、ゴズルさんなりに色々試行錯誤してたみたい…。」
 レイさんがそうつけ加えてくれました。

「でも、ドワーフ族には古くから伝わる 両者を成立させる技法があるのです。」
「なんと!」
 兵隊さんたちの顔がパッと明るくなります。
「何かすごい事を言っているように思えますけど、出来上がったものはすでに皆さんが知っているものですよ。」
「なんですと?」
 兵隊さん達は皆一様に目を丸くし、ザワつきます。
「硬い銑鉄を、とにかく叩いてねじって折り返し 炭素を弾き飛ばし、炭素含有量を銑鉄・軟鉄両者の中間に持っていった物が鋼鉄…
つまり鋼(はがね)というものになるのです。」
(厳密には鉄は何らかの不純物を含むのが普通で、銑鉄も軟鉄も鋼の一種と呼べるので この言い方はおかしいのですが、
分かりやすくする為にあえてこうしてます。ここで言う『はがね』は鋼材としての鋼とは別のニュアンスを含むと解釈してくださいな。)
「おおぅ!鋼とはそういうものだったのか!」
 初めて部隊長が分かったような表情を見せます。まるで子供ですね。

「隣国が置いていったこの剣は、大昔に廃れてしまった折り返し鍛錬法という技術で作られているんです。
この方法は、ドワーフ族が古代文献と長年の探求で復興させたものです。誰かが隣国に持ち込んだみたいですね。」
「今、東はオーク族との小競り合いが絶えませんから、武器商人にとってはいい市場でしょうね。」
 レイさんが羨ましそうにつぶやきます。

「この剣は鋼の棒をたくさん作り、種類の違う鋼のパーツを部分で組み合わせ、さらに叩いて伸ばして繋げて最終的に剣の形に持っていく…。そういう作り方をするのです。」
「なんと…そんなに手間がかかるものなのか…。」
「しかもこの剣は、人間ではなく間違いなくドワーフが手がけたものですね。人間にはまだこの技法を会得している人は少ないはずですし、人の筋力でこの鍛え方はちょっと無理だと思います。」
 隣国が置いていったという一振りを手にし、その浮き出た模様を見て私は確信します。

「ふむ、そうか鋼とはそういうものであったか…。」
 部隊長以下、兵隊さんが納得したかのように目を瞑ります。
 そこへレイさんが改めて結論を伝えました。
「とにかく注文をキャンセルする必要はありません…。何故なら、ナナちゃんがウチへ来てから納品し続けているものは、これと同じ製法で出来ているからです。」
「! 君がこれと同じものを!?」
「う~ん、同じ性能が出てるかどうかはわかりませんけど、作り方は同じですよ~。」
にへっ(´∀`)
 そういって私は、昨日仕上げた一本を持ち出してきました。
 刀身には隣国の剣のものに似た模様が浮かんでいます。えっへん!

 その刀身を確認した部隊長はキリッとした顔に戻ります。
「どうやら我々の取り越し苦労だったようですな。キャンセルの件はなしということで、注文通りこの品を30本納品していただきたい。」
「ありがとうございます。」
 レイさんが丁寧に頭を下げました。

「来週にはお持ちできますよ~。」
 私も笑顔で応えます。ニカッ
「貴女達の仕事ぶりは感謝に堪えない、では失礼する。」
 部隊長さんはそう言ってゾロゾロと部下達を連れて帰っていきました。
 兵隊さんが暇なのは良いことなのですけど、あんなに沢山の人数で来る必要あったのかなぁ…。

「さ、食事に戻りましょ。」
 レイさんが『一安心』といった笑顔で言いました。
 私は満面の笑みで答えます。
「はいな!」
 こうしてその日の騒動は幕を閉じたのです。


~エピローグ~
 その夜、私は複数のポーションと二本の剣を庭へ持ち出します。
 部隊長さんが置いていった『隣国の剣』と、私が作成した『納品物と同型の剣』。
 私もドワーフ族の端くれです。他人の作った剣と自分の剣のどちらが優れているのかやっぱり気になるのです。 それにこの刀身模様には、見覚えがあるのです…。

「まずは、こうやって剣を地面に刺して…」
 深く土に打ち込んだ杭に隣国の剣のグリップを縄で縛りつけ、刀身が真上に立つようにします。
 そして 用意した高価な『筋力倍増ポーション 長持ちタイプ』を一本飲み干し、私は私の剣を水平に構えます。
「エイヤァッ!」
 ギィインンッ!

 互いの刀身の中ほどやや上…一番斬撃力が出る物打ち部分同士をブチ当てます。
 さすがにどちらの剣も 少し欠ける程度でほぼ無傷。そういう道具なのですから当たり前です。
 後は体力に任せ、倒れそうになる剣を直しながら、何時間も繰り返します。
 何せ私は小さくとも、筋力では人間より遥かに勝るドワーフ族。その上筋力ドーピングです。
 二本の剣は通常ではありえない速度で劣化していきました。
 そして…東の空がうっすらと明るんできた頃…。

 パキィイイィン!
 甲高い音を立てて折れたのは…私の剣でした。グスン…。
「やっぱり私の剣はダメダメって事じゃないですか~~~っ!」
 東から昇る太陽に向かって大絶叫です。すると、お天道様が返事を返してきました。
「よぅ、なぁにやってんだ チンチクリン!」
 誰かが太陽を背にこちらへ来ていたようです。私はそのシルエットだけで、誰なのかすぐにわかりました。
 私と同じドワーフ族女性でありながら、人間の女性と遜色ない長身は見間違えるはずがありません!

「師匠ぉ~!」
 私は久しぶりの再開にハグをしようと駆けつけますが、師匠から突き出された左手が私の頭を抑え、それを許してくれません。
「相変わらず鬱陶しいな! そういうのは嫌だと言ったろ。…ん?何だこの剣…俺のじゃねーか。」
 師匠が地面に突き立てた剣に気がつきます。
「やっぱり師匠のだったんだ!」
 にぱぁ~(´∀`) 
「何だよその笑みは…きもちわりーな。…こっちの折れてるのはお前のか?」
 師匠はしばらく両者を見比べます。そして口元に笑みを浮かべました。

「へぇ~、ここまで出来るようになったか…。」
 一瞬褒める様なそぶりを見せましたが、すぐさま一言付け加えます。
「俺にはまだまだ及ばないがな!」
「ううう……、そんなことは当たり前ですよぅ!」
 師匠はそこそこ名の通った職人です。それに対し私は独り立ちしたばかり…、その差は埋めようもなく広いのです。
 分かってはいますが悔しいっ! 

「それより、今度はどこへ行ってたんですか?」
「いや~、東の国にちょっくら武器を売り込んできた。ボロ儲けだゼ!」
 やっぱり隣国に広まっている剣はこの人のものでした…。ひと悶着の犯人判明です。
 人の気も知らないで~っ!

 腹立たしさと師匠の凄さに感動しつつ、私はまた新しい朝を迎えます。
 今日もお仕事がんばるぞ~!(←寝てない)



【ナナちゃんコラム ~ロングソード~】
 ロングソード(long sword)とは、固有の武器の名称ではありません。
 形も決まった特別な形があるわけでなく、長さも飛びぬけて長い剣…というわけでもありません。
 (定番の形状というものはあります。)
 ぶっちゃけ 騎士たちが各個人が好みで拵えてる物も多く、サイズもバラバラです。
 あくまで「それまであった片手剣よりは長い剣」という定義上の呼び名です。
 日本刀でいう打刀を脇差に対して「大刀(だいとう)」と呼ぶのと似た意味合いですね。

 騎士剣と呼ばれることもあるロングソードは、拍車/拍刺と並んで騎士の象徴でもあり、
身だしなみ的に腰に帯びることが多くありました。
 よって、両手剣のような必要以上の長さにはならず、このサイズ(刀身約1メートル前後)に落ち着いたと思われます。
 後期のロングソードは片手でも両手でも扱えることが特徴のひとつで、近代ではバスタードソード(bastard sword)や、
ハンドアンドハーフソード(hand and a half sword)という名称で分類されたりもします。
(※ 一般的には片手剣として認識されていますが、このお話では、後期のロングソードとは
『片手でも使えるが、基本両手で使う事前提の剣』のこと と定義しています。)

 長期間使われている武器なので、時代によって形も材質も変化していきます。
 金属鎧がまだ高価で一部の特権階級の物だった頃は、主流の鎧は布/革製がメイン。
 斬撃が通用するので刀身幅は根元から先まであまり変わっていませんでした。
 金属加工技術が向上して、金属鎧が量産され、鉄輪をつなげたチェインメイルが登場すると斬撃が通用しません。
 相手を切れなくなったロングソードは、鎧の隙間を突くために切っ先が鋭く細くなっていきます。
 材質は質の良い鋼となっていき、刀身が薄くなることで、軽量化のための溝『樋(ひ)英語ではフラー(fuller)』はなくなり、時には完全に二等辺三角形の刀身を持つものや、突くことしかできない針状のもの『タック(tuck)仏名エストック(estoc)』まで現れます。

 しかし、地方によって製法の進化にばらつきがあるため、一部では9世紀でも優れた製法と形状で作られているかと思えば、一方では中世半ばになっても片手剣を大きくしただけのような仕様だったりと、かなりバラエティに富んだ形状のものが存在します。
 ロングソードという名の分類は長さのみに着目して呼んでいるだけなので、分類方法としてはかなり大雑把。
時代とともに形状、材質も変化している為、はっきり『これだ!』といえる形状はないのです。
 興味のある方は『オークショット分類法』という言葉を頼りに調べてみて下さいです!
(日本語版ウィキペディアには画像がない…。てゆーか、いい加減日本語で書かれた本でてくれよぅ~。)

 完全な全身鎧が登場すると、ついにロングソードではほとんどダメージを与えることができなくなり、騎士たちも 本来は雑兵の武器である、長柄の武器(ポールアーム)やメイス/フレイルを使うものが現れます。
 気がつくとロングソードはサブウェポンとなり、戦場の主役から降りることになりました。
 その全身鎧も 飛び道具の発達で、アッという間に廃れるんですけど、それはまた別のお話ですね。

 宗教的観念もあり、完全鎧が登場してもロングソードを捨てることができない騎士達は、サブウェポンとして持ち歩き、メインウェポンを失った時に使用。もちろんこだわってロングソードしか使わない騎士もいます。)
 さらに馬も失った時は、白兵戦にてハーフソード術(グリップと刀身の中程をそれぞれ持って、突きを主体とする近接格闘術)や、殺撃(刀身を両手で持って柄部分を殴りつける)といった攻撃方法を駆使して戦ったのです。
(※殺撃{もしくは雷撃}という名称は、参考にしている書籍の造語(日本語に当たる言葉がないゆえの当て字)なので、これで正しい言い方なのかは不明…。)

【ナナちゃんコラム ~剣の分類~】
 武器にはいろんな種類があります。私が作っている武器だけでも軽く数十種類はあり、呼び名もさまざまです。
 しかし、皆さんの世界での剣の名称や分類は近代になってからのもので、ビクトリア時代の学者が先入観で区分けしてしまったものも多く、正直的を射ていないまま広がっているのが現状です。グスン(泣)

 武器類は戦場の流行とともに、徐々に変遷していくのが普通で、当然はっきり区別できるような違いがいきなり現れることは余りありません。前項のロングソードがはっきり形状を断言できないのもこのためです。
 よって、中間的なものや、ほかの武器の特徴を併せ持った武器というのも当然存在します。
 あまり知られていないこととして、当時は剣の種類を明確な呼びわけをしていないどころか、時には混同して呼んでいることも多く、片手剣と初期のロングソード、初期の両手剣の明確な差は実はあまりありません。

 後期になると さすがに各剣の形状は違ってきますが、それでも『刀身部分の長さ』は、ロングソードも両手剣も あまり違わない長さ(大体1m前後)です。
 後々両手剣コラムでもやりますが、後期の両手剣は 刀の長さはそのままで、リカッソやグリップ部分が長くなってくるのです。
(もちろんこれも例外はあります。)

 まだ剣としての用途がはっきり分かれてない 初期の『大型のロングソード』と、『小型の両手剣』は、専門家でも見分けるのが困難で非常に厄介なものなのです。
 また、当時は奉納用や儀礼用の剣というものがあり、これらは権威を示すため、派手な装飾とともに大きめに作られることが一般的でした。
 つまり、装飾の少ない儀礼用の剣は、装飾の多い大型実用剣との区別が非常につきくく専門家も頭を悩ませる大きな問題なのです。

 まずは武器の種類や名称というものは『明確には分けられないのが普通』と考えていただいたほうが間違いないですね。
 ロングソードとは、完全な片手剣(両手持ちができない剣)と両手剣(片手ではとてもあつかえない剣)以外の剣、という言い方のほうが的を射ているかもしれません。
 それでも初期のロングソードは方手持ちしかできないものも多いので、完全な分類ではないのです。



【あとがき】
 初回は贅沢にもコラムが二つです^^
 っていうか…本編も、いきなり『脱炭(ここでは熱した鉄を叩いて炭素を弾き飛ばすこと)の話かよ!
と突っ込みたい気分。
 さらに実は初稿段階では【剣の製法について】というコラムもあり、三本立てだったのです。
 さすがに剣の製法は複雑すぎる上、中世武器について何も知らない方もいらっしゃるだろうとのことで、
 こちらのコラムである程度知識をつけてもらってからの方がいいのではないかと判断。
 後のエピソードに沈めることにしました。

 まぁ、本編のお話は、『製品納入をキャンセルをされそうになったのを回避するというだけ』という何の波乱もない話ですし…。たぶんこんな話を面白がるのは世界中でも吾輩だけでしょう。(自爆)^^;
 目指せ中世ファンタジーの日常系!(コラ

 あと、毎度のことですが、吾輩は素人なので、間違った知識や解釈もたぶんに含まれると思われます。鵜呑みは厳禁です!

 PS:できれば挿絵を入れたかった…。2話目は頑張って入れたいなぁ。
 でわでわ(^^)ノシ
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2014-05-10 : 鋼の詩(はがねのうた) : コメント : 0 : トラックバック : 0
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プロフィール

MITAKEN0

Author:MITAKEN0
F井県E市に生息中のキモヲタ。

好物は武装神姫、トランスフォーマー、LEGO、萌系フィギュア。
神姫NETの公式SS板でワンユニット師だった経歴を持つ。
無類の巨乳好き♡

なお、当ブログの映像、画像、文章等の
無断転載はご遠慮くださいな~。

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