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鋼の詩(はがねのうた)3 ~レイピア~

三話目はファンタジー作品でも人気のあるレイピアです。

ただし、現在のフィクション作品でよく見られるものは、
小型に進化したスモールソードですね。

本来のレイピアは刃渡りが1メート前後のかなり長めの剣なんです。

※この物語はオノマトペを多用した作りになっているので、
人によってはわかりにくかったり、ビジュアルイメージがしにくいかもしれません。

※「物語はどーでもいい」という方は、武器コラムだけでも読んでみて下され。


【刺突という名の悪魔 ~レイピア~】

 今日はお店の定休日。
 私はレイさんと一緒に、城塞都市メタトロンの中の街でお買い物(という名目の散策)です。

 私たちのお店は メタトロンの東門付近。
 お堀がわりの小川の外側にありますが、買い物のとき以外 あまり城壁の中に入りません。
 買い物や仕事の取引以外での用事がほとんどないからです。

「ナナちゃん、こんな時まで武器を持ち歩かなくてもいいのよ?」
 重そうな私の『武器満載巨大リュック』を見てレイさんが言います。
 私はお店が休みのときも、ちょくちょく自主的に自作武器を持って売り歩いているのです。商売第一!

「いーえ!こんなときでも『武器が欲しい!』と言って来る人がいるかもしれません!」
 そう答えますが、実際は ほとんど売れたためしがないです…グスン。
 しかし、まだまだ若手の私は、とにかく自分の銘が入った武器を売って名を覚えてもらうしかないのです。


「う~ん、商売熱心なのはいいけど…さすがにその格好はねぇ……。」
 一応余所行きの服を着てはいますが、まるで行商人のような私の姿にレイさんが呆れます。
 表情もどこか照れくさそう…。
 典型的街娘スタイルにケープを羽織っただけのレイさんとはたしかにギャップがあるかも…。
 たぶん レイさんは、こんな私といると目立つので恥ずかしいんでしょうね。

 私はというと、レイさんのお店 (正確にはニャンコ店長のお店ですが。) に雇われる以前、
ずっとこのスタイルで行商をしていたのですっかり慣れっこです。
 重いとか恥ずかしいという感覚すらありません。


「ようナナちゃん、今日は歩き売りかい?」
 お使いでよく訪れる、なじみのパン屋のおじさんが声をかけてきます。

「お安くしておきますよ~。」
「いやぁ、ウチはさすがに武器は必要ねぇかんなぁ。ガハハハハ。」
 いつもの社交辞令が飛び交います。

 事の始まりは、夏向けの洋服店を覗いている時でした。

「決闘だ!決闘が始まるぞ!」

 中央広場側へ続く小道から、一人の青年が叫びながら走ってきました。
 大声でまくし立てながら商店街通りを通過し、やがて姿が見えなくなります。

「決闘…、それはただ事じゃないわね。」
「平和な街に諍いごとを持ち込んで欲しくないですぅ。」
「とにかく行ってみましょう。」

 私たちは青年が走ってきた道を逆にたどります。
 同じように野次馬根性を出した人々が一緒になだれ込み、通りが人の川のようになりました。
 広場にはすでに人垣ができており、背の低い私では中の様子がまったく見えません。

「すみません!ちょっと通してください!」
 でっかいリュックが邪魔でしたが、子供を装って無理やり前に出ちゃいます。
 こんなときは恨めしい低い背丈が役に立つのです。姉役のレイさんもついでに連れて最前列へ…。

 人垣は円状になっており、ほぼ円形広場の外周に沿っています。
 中の空間は当然ポッカリと4サロム(約40m)位の円になっていました。
 空間の真ん中には5人くらいのグループが二つほどいます。
 全員身なりがよく、上流階級の若者の集団のようです。

 互いのリーダーらしき青年達が、言い合いながら腰の剣【レイピア】と、
【対で使う短剣】に手をかけていました。
 まさに一触即発。

ジュリン! シュラン!

 二人がレイピア&短剣を抜くのはほぼ同時でした。
 正式な手続きをふまえたものではないので、これは決闘というより『私闘』というべきですねぇ。

「いけない!ナナちゃんラピエールあるわね?」
「はぁ、レイピアも持ってきてはいますけど……。」
 慌てているのか、レイさんが彼女の出身地の呼び名でレイピアを要求してきました。
まさかねぇ…。
 と思った瞬間に私のリュックからレイピアが消失!

 レイピアを鞘ごと抜き取ったレイさんは大きく開けられた円形空間に飛び出します。
 なんという大胆さでしょ!
 というか、私のレイピアさん…すぐに取れるところにあったのね~。

「待ちなさい!」
 群衆のざわめきに負けないくらいに、大きなレイさんの通った声が響きます。
 突然の乱入者に、観客も含めた一同は一斉に沈黙。

「やめましょうよぅ。貴族のケンカなんか放っておけばいいじゃないですかぁ!」
 私は人垣からはみ出しながらも小声でレイさんを止めました、たぶん無駄でしょうけど。
  レイさんおせっかい焼きだからなぁ…。

「そうもいかないの!このまま続ければおそらくあの二人……どちらとも死ぬわ。」
 そういうとレイさんは、ツカツカと広間中央にいる貴族たちのところに向かいます。

「はぃ?」

 レイさんの言葉に私の脳内は疑問符が乱舞。

【負けたほうが死ぬ】ならわかりますが、両方死ぬってどういうことなんでしょ?
 私が考えても出ない答えを探している間にも、貴族たちとレイさんのやり取りは続きます。

「我々は今、互いの名誉を賭けた死合をするのだ。それを妨げる貴女(あなた)は何者だ!」
 派手な赤い上着を着込んだ、左のグループのリーダー格が声を荒げます。
 闘いを邪魔されてかなりご立腹の様子。
 鼻の下の 触角のような『ツンツンひげ』が、口の動きに合わせて激しく動きます。
 そんな相手にも怯まずレイさんが返答します。

「通りすがりの武器屋よ!」
 アハハ…間違いないんですけど、いろんな意味で場違いですよレイさん。

「貴女(あなた)は 神聖なる勝負に泥を塗るつもりですかな?」
 右側グループのリーダ格らしい 白い上着の青年が、レイピアを胸に掲げたまま丁寧に、
 しかし強く非難します。こっちの人は結構美形ですねぇ。

 負けずにレイさんも返します。
 普段のレイさんとはまったく印象が違う強い物言いです。

「貴殿たちこそ貴族名乗るのなら、
 つまらない縄張り争いで皆に迷惑をかけないでっ!貴族の度量を示しなさいっ。」

 あわわ、決闘に至った事情も経緯もよくわからないのに 言い切っちゃったですよ!
 でも、最近は上流階級の若者たちの間で、縄張り争いの小競り合いは増えていて、
 剣や小盾(バックラー)を持ち出しての乱闘騒ぎにもなっているようです。
 貴族ともなると決闘になっちゃうんですね。

「つまらない縄張り争いだと!小娘が我らを愚弄する気か!」
 赤服さんがビュッ!と手にしたレイピアをレイさんに突き付け吠えます。
 レイさんはさらに返します。

「もう一度いいます、言葉を理解する貴族なら剣を納めなさい。
 言葉を理解できぬなら 貴族を名乗るな!」

「あわわ、レイさんその言い方は逆効果ですよぅ!」
 貴族にまったく臆することがないレイさんはかっこいいですが、身分違いも甚だしいです。
 後でどんな報復が待っているか…考えただけでも恐ろしい!

しかし、白服さんのほうは レイさんの言葉を聞くと、レイピアと短剣をすぐさま鞘に戻します。

「そうですね…、貴女の仰るとおりだ、少々熱くなりすぎたようです。」
「なんだぁ?怖気づいたのか!」
 赤服さんのほうが白服さんになじります。

「何とでも言いなさい、お嬢さんの言うことはもっともです。
 とにかく場がしらけてしまった、我々はこれで失礼する。」

 白服さんは仲間を引き連れ、人垣をかき分け消えていきました。
 へぇ~。ちゃんと分別のつく貴族さんもいるんですね。

 一方赤服さんの方はというと、ますます不機嫌になり、なじる相手をレイさんに変えたようです。

「クソッ、これじゃ俺たちだけが悪者だ。」 
 そう吐き捨て、レイピアをレイさんに向けます。

ビュっッ

「小娘よ、そのようなモノを持ち出してきたのなら、覚悟はあるということだな!
 代わりに死合って貴様の正しさを証明してみせよ!」

 怒りの矛先はレイピアと共にレイさんに向けられました。
 やっぱりこういう残念な貴族もいるですか…。( ̄Д ̄)

 一方レイさんの方も…。
「貴方は今、貴族であることを自ら捨てたわね……。」

シュラン!

 レイさんは 私のレイピアを抜き放ち、肩にかけていたケープを左腕にゆるく巻きつけます。
 対で使う短剣がないので、ケープを巻くくらいしか対応する術(すべ)がないのです。

 次にスカートをたくし上げると髪飾りの髪留めでとめ、脚の動きを妨げないようにします。
 ていうか、レイさんやる気満々ですヨ! ドキドキハラハラ!(@Д@;)三(;@Д@)

「後悔することになるぞ小娘!」
 赤服さんは体を横向きの半身にし、右手のレイピアを正面に突き出し、左手の短剣を引いて構えます。
 典型的な第三の構え。その姿は余裕に満ち溢れ、自分が負けることは微塵も考えてないようです。


 一方レイさんは体を半身にするのは同じですが、上半身はまるで体操のように前屈させ、
 レイピアを持った右手を大きく突き出した格好です。
 さすがに肘はゆるく曲げてますが、出来るだけレイピアを突き出したスタイル。
 それは私も始めてみる構えでした。

「それではいくぞっ」
 完全に舐めているのか、赤服さんがワザワザ宣言してから突きます。
 が、レイさんの方は上半身を出している分リーチが長く、体までは届きません。

 レイさんはレイピアの刀身で、赤服さんの突きを受け、外側へ滑らせます。
 切っ先はレイさんの体の外に流れ、逆にレイさんの方の切っ先が
 赤服さんのレイピアをガイドに腕の付け根へと滑り込みます。

ギィィィン!
 勝負は決まったかと思いましたが、
 赤服さんの短剣が間一髪で割り込み、レイさんのレイピアを上へとそらせます。
 決闘専用の短剣ではないみたいですが、やっぱり防御面での短剣の有無は大きいなぁ。

 右腕を跳ね上げられて体勢を崩したレイさんに詰め寄り、振り上げたままの短剣を突きおろす赤服さん。
 それをケープを巻いた左腕で、短剣を持つ手首をガッチリと受け止め 阻止するレイさん。
 肘を使ったテコの原理で筋力差を埋め対抗します。
 両者とも両腕がクロスし、バインド(鍔迫り合い)に近い状態。
 二人はレイピアの間合いを取り戻すため、磁石が反発するように飛び下がります。

 今の攻防は互いの力量を測るための小手調べといったところなのでしょう。
 本気なら、簡単にバインドを解いたりはしないはず…。
 それを互いに察知し、理解しているからこその仕切り直しです。

 今度はレイさんが仕掛けました。
 独特の低い前屈姿勢から、リーチのある突きを短剣めがけて突いて、赤服さんのレイピアを誘います。
 レイさんを見下している赤服さんは その攻撃に釣られ 短剣で受けると、
レイさんの顔にめがけてレイピアを突いてきました。レイさんピーンチ!
 と思った瞬間、レイさんは突いた不安定な体勢から体を右にロールしながらのけ反ります。
 同時に左腕のケープはブアッと広がり赤服さんのレイピアに覆い被さりました。
 ケープってこんな使い方があるんだ! これは驚きです。

 レイさんはそのままクルリと回転し、
赤服さんの左側面にしゃがみこみ、全身のバネを使って赤服さんの左側に体当たり!

『レイピアでの攻撃をしない』という 予想外の行動に対応しきれず、
 赤服さんは突き飛ばされてうつ伏せに倒れこみます。

 レイさんはすぐさま持っているレイピアを手放すと、
倒れた赤服さんの短剣を持った左腕を捻り上げ、上にのしかかりました。
 経穴押しを組み合わせた 男性の筋力にも負けない押さえ込みです。
 左腕を捻られた赤服さんは当然短剣を持っていられません。
 カランッ!と乾いた音を立てて短剣は転がります。
 レイピアを持つ右手の方は、ケープの重みのせいで まともに振るう事も出来ません…  勝負はついたのです。

「どう?命を救われた気分は。」
「クッ……。」
 赤服さんは屈辱的な表情で絶句します。

「なぜ出しゃばってまで決闘を止めたのか…、教えてあげましょうか?」
 レイさんが強く、しかし優しい口調で問いかけます。もちろん私も聞きたいです!

「私の国では隣の国の影響でレイピアによる決闘が流行ったわ…、
 もともと隣国では法的に決闘の作法を決めただけで、騎士道を重んじ死合う者など滅多にいなかった…。
 しかし、決闘のスタイルだけを真似た私の国では、流行した決闘によって多数の死者が出る惨事になったのよ。」
「それがどうした?お互い合意の上で命を懸けているのだ、何も問題はあるまい!」
 赤服さんがそう吐き捨てます。するとレイさんはより口調を厳しくし、怒鳴りつけるように言いました。

「何も分かっていないわね!
 レイピアという武器は致命傷を負わせやすい代わりに、
 戦闘能力を奪う力…ストッピングパワーが足りないのよ!」

ビキィッ!
「ぐぁあッ!」

 お仕置きとばかりに、極めた関節を痛めつけるレイさん。


 私はハッとなり思い出します。レイさんが止めに入る前に言った『どちらとも死ぬ』という一言を…。
「どう言う……ことだ?」
 赤服さんはまだ分からないようでしたが、武器をこしらえる私にはすぐに分かりました。
 両方死ぬってそういうことだったんですね…。

 レイさんは続けます。
「人というものは簡単には死なないものなの。
 戦場では、肺や心臓を貫かれても しばらく活動できた例が山ほどあるわ。」

 そうなんです。
 残酷なことに生き物は、死に至るような重傷を負っても、すぐには死なないことがままあるのです。

「刺し傷というものは、致命傷になりうる割には 戦闘行動を奪うには至らない…、
 そうして互いに重傷を負いながらも何度も突き刺し合い、
 共に失血死する『相打ちになる決闘』が後を絶たないのよ!」

 一際強く広場にレイさんの声が響きます。

 どちらも死んでしまう決闘などまったく意味はなく、虚しさしか残りません。
 その理由が単なる縄張り争いならばなおさらです。
 私にはレイさんの悲痛な訴えが、手に取るように分かりました。
 そして感じたのです。レイさんが背負っているであろう暗い過去を…。

「意地の張り合いで死ぬことが貴族の名誉ですか! よく考えてください…。」
 その一言で、赤服さんの表情も一変し押し黙ります。
 レイさんの『口撃』は、赤服さんの腕を折らずに心を折ったのです。

 暗く悲しい目をしながらレイさんは赤服さんを放すと、
 放り出した私のレイピアを拾って鞘にしまい、こちらへ戻ってきました。
 取り巻きの仲間たちが、赤服さんを助けに駆け寄るのが背中越しに見えます。

 群衆はしばらくの静寂に包まれましたが、
 貴族にも負けない凛とした立ち振る舞いでその場を収めたレイさんに、
 ドッと喝采の声が上がりした。まるでお祭り騒ぎです。

 そんな民衆とは裏腹に、私はレイさんを心配します。
 きっと以前につらい思いをしているはずなのです。
 そんな私の様子を察したのか、  戻ってきたレイさんは レイピアをそっと手渡しながら微笑んで一言。
「長いのに強度もあって軽い……いいラピエールだったわ。」

 作り笑いがちょっと痛々しいですが、暗いムードが大嫌いな私は大きな笑顔で答えました。
「えへへ、重量配分にはずいぶん気を配りましたから!重心一つでも変わるんですよ~♪」
 出来るだけ明るい笑顔を作る私。暗い気分などふっ飛ばしちゃうのです!
 そんな私を見てレイさんの表情も幾分明るい笑顔に変わりました。やった~!

 こうして、その日の騒動は終わりました。
 予定していたショッピングは早めに切り上げ、お店に帰ります。


【エピローグ】
 事態はそれで終わったかに思われました。しかし、一週間後…。
 私が店番をしている時に、ずいぶん身なりの良い中年男性がお店に訪れてきました。

「私はエルフリード=ベルモント卿の使い、アウラと申します。
 レイ=クロエ・マリエール女史はご在宅ですかな?」
「あ、はい!少々お待ちを……。」
 私は奥で在庫確認をしているレイさんを呼びに行きます。

「エルフリード様って壁内の子爵の息子さんよね?確か次男坊…
 今のところ武具の注文は受けてないわよ?」
「どうもレイさん個人に用があるみたいですけど…。」

 一週間前のイヤな騒動を思い出してしまいます。
 とうとう貴族さんたちの仕返しが来たのでしょうか?
「とにかく出ましょうか。」
 仕事を中断して表へ行くレイさん。

「御用は何でしょう?」
 レイさんの問いに、アウラさんは一枚の上質紙で出来た封書を取り出してきます。
 流石貴族…粗悪な馬糞紙じゃありません!

「若様からお預かりしてまいりました。どうかご検討を…。」
 受け取ったロールの封蝋を開けて読んでいくレイさん。
 なぜかその顔は見る見る赤くなります。 ええ~~~何? なんなのぉ~?
「こんな事…とてもお受けすることは出来ません。お引取りください。」

 後で軽く教えてくれましたが、相手はあの白服の貴族さんで、内容は要するに求婚の手紙だったようなのです。
(詳しくは教えてくれませんでした…グスン…。)
 結構美形だったのにもったいないなぁ~。


 それよりも、あの一件が公示人に面白おかしく触れまわられたようで、
 街中でちょっとした噂になったせいか、少しだけお客が増えた気がします。
 物騒な決闘も商売繁盛の役に立ったのなら結果オーライなのかも!?
 とにかくお店は今日も平常運転です。



【ナナちゃんコラム ~レイピア~】
※長さや重さの単位は、作中世界のもの になっているので少しわかりづらいかもしれません。

 レイピア(rapier)は古代からある『剣』という種類の刃物武器としては
比較的時代の新しい部類の刀剣類で、15世紀中頃から普及し始めました。

 それもそのはずで  もともと軍事用の剣ではなく、
持ち歩くにはかさばる通常の片手剣(ロングソード含む)の代用品だからです。

 ロングソードは拍車と並んで騎士の象徴の一つとも呼べる大事な物ですが、
平時の街中で、護身用の剣(サイドソード)として持ち歩くには(おそらく刀身の幅が)邪魔になるので、
代わりの剣として発達したものが、細く進化したレイピアでした。

 そう、意外かもしれませんが、レイピアも系譜上はロングソードの親戚なのです。
 よって長さも一般の片手剣よりは長く、刃渡りが100サンチ(cm)あたりのものが多くあり、
グリップを含めた全体が130サンチに達するものもあります。

 重さもロングソードとさほど変わらない、少し軽い程度の1.2キグロ(㎏)~2キグロ前後。
 この点からもロングソードの特性を受け継いでいるといえますね。

 当時の武術家も、『レイピアの長さは、切っ先を地面につけると柄の先端が脇にくる位が丁度良い』
という意見をあげている方が多いようです。
これは『切っ先をいち早く相手に届かせる必要がある』というのも理由のひとつ。

 逆にこの長さがたたり、切り結びあうには長すぎて、
当時の剣士たちもレイピアの欠点としてその過剰な長さを上げています。
 一度バインド(鍔迫り合い)に入ってしまうと簡単には抜けられないんですね。
(本編の一旦バインドから離れるシーンは、お話として面白くするためにやってます。)

 しかし、現在のフィクション作品やゲームで描かれるレイピアは、どれも短いイメージで定着しています。
それはなぜなのか…。

 実はレイピアのような細身の剣が隆盛を極めるのは、
 もうちょっと後の時代…17世紀頃
なんですね。

 この時代になると、火器の発達によって重い金属鎧が廃れ、
細身の剣でも十分に相手を倒せるようになったこともあり、
戦場でもレイピアを目にすることが出てくる時代…。
 皆さんの世界では『三銃士の時代』というとわかりやすいかもしれません。

 この頃のレイピアは剣術が発達したおかげで 長さは短くなり、
現在ではスモールソードと呼ばれています。
(ウォーキングソードやドレスソードも、スモールソードの仲間です。)

 細身の剣のチャンバラ作品は、この時代以降のものを描いている場合が多く、
それらの作品により、レイピアは片手剣サイズというイメージが定着しているものと思われます。



【レイピアの変遷】
 原型はスペインで大流行した
エスパダ・ロペーラ(espada ropera)と言われ、1468年に記録に登場します。

 現在でレイピアとして分類される このタイプの細身の刀剣の元祖は、
このエスパダ・ロペーラが基本と言っていいでしょう。

 これのフランス版と思われる同タイプの剣は、
エペ・ラピエレ(epee rapière){エスペー・ラピエールとも…エペは剣、ラピエレは刺突を意味する}
と呼ばれ、1474年記録に登場します。

 名称である『レイピア』の語源はこの「ラピエレ」か、
スペイン語で引っ掻くを意味する「ラスパール」からきている
という説が有力のようです。

 その後イタリアへと伝わり、こちらでも大流行。
 そしてぐるりと一回りして、17世紀頃にはフランスへと逆輸入されます。
 こういった経緯があるので 本場ヨーロッパでは、
『レイピアの起源はスペインとしながらも、用法の起源はイタリアである』とされているのが面白いですね。

 これはイタリアではスパダ・ダ・ラト(spada da lato)という刺突/斬撃両用の剣の剣術において、
刺突を重視していたからだといわれます。
 ちなみにイタリアではレイピアに当たる武器は
スパダ・ダ・ラト・ア・ストリスキア(spada da lato a striscia)と呼ばれています。
(単にストリッシャstrisciaと表記している本も…。)

 この後は、前項で述べたとおり サイズが小型化していくのですが、
それはもう別の武器といっていいのではないでしょうか?

 レイピアは宮廷儀礼や決闘にも用いられることが多く、
決闘用の刀剣と勘違いされてしまうこともありますね。
 しかし、あくまでも護身用が本来の使い方です。



【おまけの与太話】
 実際の中世/近世では、レイピアがスペイン/イタリアで流行したおかげで、
決闘自体もスペインやイタリアを中心に流行るのですが、
あまりの致死率の高さに、若者の私闘の数が激減するという笑えない減少がおきています。
 時代を重ねると、決闘の勝敗定義も どちらかが血を流したら終わり等、
どんどん緩くなってグダグダになっていきます。

 また、ストッピングパワーという概念がハッキリいわれるようになるのは、
実は銃器が発達してからのものなのですが、
このお話は中世が舞台というわけでもないので使わせてもらってます。
「ふぁんたじー」ですので…。

 ルネッサンス期でも、切り傷より刺突の傷のほうがダメージが大きく有効であると判断されてます。
 致死率の観点で見れば間違いないのですが、本編にあるとおり 
刺突攻撃は相手の反撃を止めるには至らず、むしろ油断につながり、
かえって自分の身を危険にさらす恐れも高いのです。

 そして、斬り傷のほうが反撃行動を奪いやすい、(反撃を受ける危険性が低い)上に、
相手を殺してしまう確立も低いという、人命尊重的な観念からすると有益な武器ということになります。
(このとき五体の無事は考えませんよ~。)
 人道的であることが美徳とするなら、レイピアなど野蛮極まりない武器といえるのです。


 また、よく似た用途の武器にタック(tuck){日本ではフランス語のエストック(estoc)の方が通りがいいかも?}
というものがありますが、こちらはレイピアより登場が早く(13世紀~)
長さもロングソードと同等の長さを持つ、よりロングソードに近い剣種です。
よってレイピアと違い中世の頃から戦場で使用されてます。

 ただし、レイピアが戦場でも使われるようになる時代から(17世紀~)は、
タックも大型のレイピアと混同して呼んでいるケースもあり、非常にややこしいようです。
 ここからも武器分類はテキトーなことがよくわかります。

 現在レイピアと言うと刺突専用の細身の剣という印象で定着していますが、
そのデザインは多種多様で複雑なため、研究者も混乱しているのが実情とのことです…。
 なにせ『レイピアとは何か』について書けば論文が一つできてしまうくらいなのだそうで…。
 う~む、奥が深い武器ですねぇ~。

 なお、スモールソードについては後々パリィングダガーとあわせてやりますのでお待ちください。
(またそれか)
 タックも別項目で用意してます。…というか次の四話目だったりして…。


 ぜんぜん関係ありませんが、
現在は『ラピエール』でググると自転車(ロードバイク)が引っかかってきますね。(笑)
 こっちのスペルはlapierre(元々は人名)ですよ~。



【あとがき】
 今回のレイピアはストッピングパワー云々の話ともどもやっておきたい話のひとつでした。
 よってコラムが長いです。

 日本の中世ファンタジー(ラノベやアニメ含む)は、
実際の中世武器の時代変遷はまったく無視されているため、
武具類に着目するだけでも色々とおかしいのですが
 このお話では
『それをなるべく補正しつつ、ファンタジー要素もできるだけ残した中世感を出す』
という願望をかなえるためにできています。吾輩の願望というか我儘です。
 それにうってつけの主人公の立ち位置が鍛冶屋でした。鍛冶屋のことなどろくに知らないのにね~。

 逆に都合の悪いところは中世と全然違います。
 今回の本編でいいますと、すでに上質紙が存在し羊皮紙じゃないことですね。
(年代設定上は、我々の世界から何万年も後の未来世界ということになっているので、
紙の製法が残っている という言い訳をしてみる~。)


 これは羊皮紙だと、製法上一般人がまず目にするものではなくなってしまい、
伝言などの知らせを届けさせる時に不都合が出るので、
安い紙がすでにある世界観にしているためです。

 日本のアニメや漫画の中世ファンタジーは普通に紙が出てきますが、
紙が量産されているのって、アジア以外の場所ではすごいことなんですよ!

 もともとこのお話をはじめた理由は、武装神姫のSS掲示板で武器関係のコラムをやったことで、
『武器の種類や特徴を主眼にした読み物がかけないかな~』と思ったことです。

レイさんとニャンコ店長は転生させ、ある程度変えて登場してます。
 ニャンコ店長はだいぶ補正されましたが、レイさんは見た目も性格もほぼ当時のままですね。(笑)

 一話一話読み切りっぽくしているのも、コラムを個別にしてるのも、
 読みたいものだけ読めるようにする…という当方なりの工夫なのですがどうでしょう?

 ストーリーに関しては連動している部分も多いので、完全な読みきりにはなっていません。
 おかげで次の4話は欠番になりかけてます…。(をい


 それにしてもレイピアって定義が難しいです…。
 本なども著者によって意見が違い、はっきり『長剣』と言い切っているものもあるくらいで…、
 「いやいやロングソードからの派生種だけど、
ロングソードの一種とまで言い切るの?」
とこっちが狼狽してしまいます^^。

 現在のファンタジーやフィクションに染まった人には
「レイピアはロングソードなんだよ。」というと、「嘘つくな!」とか言われてしまいそうですね。

 しまいには日本の漫画、アニメやゲームの影響で、
アメリカなど外国にまで蔓延してしまうのが一番怖いです。

 アメリカも国自体が新しいので、正しい中世感があるかどうかなんてあやしいんですよね…。
(専門家は別ですよ~。)


次回はたぶんマスターピース スターセイバーのレビューになると思います。


PS:
先週の3月14日土曜日に、竜王(滋賀県)の三井アウトレットパークへ行ってきました。
目当てはクリブリ(レゴの専門店クリックブリックのこと)

モジュラーシリーズが、アマゾンでさえ正規に扱わなくなってきたので、
痺れを切らして#10246探偵事務所を買いにいったんですよ!

店舗自体は小さいですけど、
#10243パリジャンレストランも、以前の#10240Xウイングもフツーにおいてありました。
テンバイヤーの定価の1万円増しを買うくらいなら、
遠出してでも買えるなら行ったほうがいいですね。コンチクショウ!(買えたのになぜ怒る?
でわでわ(^ ^)ノシ
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プロフィール

MITAKEN0

Author:MITAKEN0
F井県E市に生息中のキモヲタ。

好物は武装神姫、トランスフォーマー、LEGO、萌系フィギュア。
神姫NETの公式SS板でワンユニット師だった経歴を持つ。
無類の巨乳好き♡

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無断転載はご遠慮くださいな~。

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