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鋼の詩(はがねのうた)9 【オーク族の災難 ~バトルアックス~】

いや~8月は毎年仕事が忙しいのですが、
今年は何とか耐えたもののしわ寄せが9月に来ちゃいました。
よって撮影も何もできていない上、
9月18日(月)の航空祭が中止になったのもあり、
これ幸いと鋼の詩を差し込みます。

最近はプラモデルラッシュが続くので
こんな時でもないと割り込めないw。

今回はちょっと人種差別問題も絡んできます。
あまり重い話ではありませんケド…。

※この物語はオノマトペを多用した作りになっているので、
人によってはわかりにくかったり、ビジュアルイメージがしにくいかもしれません。

※「物語はどーでもいい」という方は、武器コラムだけでも読んでみて下され。


 【オーク族の災難 ~バトルアックス~】


カン カン カン、コツ コツ コツ。

 今日は店頭前で彫金細工の店頭実演販売。
 ウチのお店は城塞都市メタトロンの東口に続く街道沿いにポツンとあるので、
昼間は結構人通りが多いのです。

 まぁ、私は細工物は苦手なので、ほとんど練習の意味合いが強いんですけどね。

「ほほぅ、若いのに上手いもんだな。」
 一人の旅人らしき中年男性が、作業する私のテーブルで立ち止まります。

「ナイフの装飾や彫刻などはいかがですか?名入れだけでもOKですよ~。」
「ふむ、そういえば俺のナイフも名前の彫りが薄くなってきたな……。」
 男性は日の高さを確かめるように空を見上げると、しばらく考え込みます。

「どのくらいでできる?」
「う~ん、ほかの仕事もありますから正確にはお答えしにくいですが…、
簡単なものなら一・二刻もみて頂ければできますよ~。」
「ならば名前の彫り直しを頼もうか。」
「有難うございます~。こちらの名簿にお名前と日付、今のおおよその時刻をご記入ください。
今からですと遅くとも暮れの三刻には出来上がってると思いますので。」
「それじゃよろしく頼むよ。」
「有難うございます~。」にぱぁ~
 今日も商売順調です!

 お客さんは街の中には用事が無いようで、城壁には向かわずに農村の方へと歩いていきました。
 お客の行方を見守りテーブルに戻ろうとすると、
ふといつもとは通行人の流れが違うことに気がつきます。
 どうやら城壁の東門のほうで何かあったようです。

「おい、門のほうで何かあったらしいぞ。」
「なんだ?ケンカか?」
「行ってみようぜッ」
 次々と人が門のほうへ流れていきます。

 するとお店のドアが開いてレイさんが出てきました。
「なんだか騒がしいわね。何かあったの?」
「さぁ…、私ちょっと見てきましょうか?」
「お仕事に差し支えない程度にならね。」
「それじゃちょっと行ってくるです。お店のほうは頼みま~す。」
「なるべく早く帰ってきてね。」
「は~~~い。」
 レイさんの声を背中に私は東門へとかけだします。

 わりと近いので、すぐさま騒いでいる声が聞こえてきます。門の前にはすでに人だかり。
門番に挨拶してから人ごみを掻き分け内へ入ると、
大通りに続く道の途中にぽっかり開いた空間があり誰かがうずくまっています。

 体の大きさからすると、どうやら豚系獣人オーク族のようです。
「臭っせぇな、商品に臭いが映るじゃねぇか!」
「ここはオーク族がくるようなところじゃねぇんだよ!」
 街中の行商人でしょう、何人かがうずくまったオーク族の男性を取り囲み、
罵声を浴びせ、殴ったり蹴ったりしていました。
「ブヒィ~~~。オラ何もしてねぇだど~。」

 オーク族は、メタトロンも結んでいる 帝都ミカエルを中心とする同盟国と
敵対関係にある国の民族なので、いわば敵国人。
こうなってしまう気持ちも分からないではないですが、
これはあからさまな私刑(リンチ)。許されることではないのです。
「みんなヤメるです!この人抵抗すらしていないじゃないですか!」
 私もドワーフ族ということで、色々偏見の目を向けられたことがありますから我慢できませんでした。
うずくまるオーク男さんと、街の商人たちの間に割って入ります。

「なんだこのチビ、豚野郎の肩を持つ気か?」
「おぅ……レイちゃんとこのナナちゃんか。」
「肉屋のおじさんまでなんですか!」
「しかしこう臭いと客が逃げちまうよ。」
「でしたら公衆浴場に連れて行くとか、水浴びを薦めるとか、
いろいろ対処法があるです!とにかく虐待はダメですよぅ。」
「………………………………。」
 街の男たちは黙り込みます。私はその隙にオーク男さんに声をかけました。
「大丈夫ですか~?」
「あ、ありがとうブヒィ~~~~ッ!」
 突如バッと飛び上がったオーク男さんは、私に飛びつき思いっきりベアハグならぬピッグハグ!
こんなに激しい行動で喜びを表す人は珍しく、純粋に嬉しいですね……
て……、臭っさ!! 
 オーク族の臭さは話には聞いていましたが、鼻が曲がるどこの話じゃありません。
これは窒息する臭さですよぅ~!

「まむげげ~~~~ッ、しむしむ!」(訳:助けて~~~しぬ しぬ! )
 組み付かれたままジタバタ暴れる私。臭いで死ぬなんて冗談じゃありません。

「おっと、うっかり絞め殺してしまうところだど。」
 さらっと恐ろしいことを口走ってハグを解いてくるオーク男さん。
さすがに密着するよりは臭くないので一安心。
「と、とにかくウチへ来てください!」
 騒ぎがどんどん大きくなり、野次馬がさらに増えてきたので、とにかくこの場を離れることにします。
それにしてもこの臭さは何とかしないと、私の嗅覚がおかしくなっちゃうですぅ~。

 オーク男さんの手を引きながらお店に戻った私は、すぐさまレイさんに
裏の小川の水浴び場を貸してもらえるよう頼みます。
「分かったから早く行って!商品に臭いがうつっちゃうわ。」
 ハンカチで鼻を覆いながらあっさり許可してくれました。

 裏口から小川のほとりの洗濯場も兼ねた水浴び場にくると、オーク男さんに説明します。
「ここの小川は綺麗ですから、体を洗って体臭を何とかしてください。」
ヤダど!オラは水浴びが でぇっきれぇなんだ。」

カチン☆
なんなんでしょこの大威張りっぷりは、少々おつむにキます。(― ―#)
「いいから洗うですっ!」
ドンッ、
だっぱーーン!

 臭いにイラついた私は、思わずオーク男さんを川へ蹴り落としてしまいました。

「ブキィ~~~~ッ、オラ泳げね~~~んだど!」
バシャ、バシャ、バシャ。

 なるほど、水浴びが嫌いなのはそういうことですか……。
「その小川は私でさえ足がつきますよ!」
 もともと深さは私の腰くらいまでしかないのです。

「シヌぅ~~~、しどぅ~~!」
脚はついているはずなのに あまりにもバシャバシャ暴れてもがくので、
仕方なく私は助け起こします。

「はいはい、革鎧を外しますからジッとしてください。」
「ブヒ?」
 胴鎧は汚れと傷だらけ、衣服もずっと取り替えてないらしく、
とてつもない悪臭の原因の一つでした。
 とにかく臭いので、一緒に洗濯もしてあげます。

「し、下の方は自分で洗ってくださいね!」
「お、おう。……こうして浸かってみるど、意外と気持ちいいモンだな、ブヒヒ。」
 背中を流してあげると、すっかり気持ちよくなったのか 鼻歌気分で応えてきます。
まるで大きな子供……。

 衣服は洗っても完全に臭みは取れなかったので、レイさんの香水を借り、
大量にぶっ掛けてから干します。
 そこまでして不快な臭みは、やっと耐えられるレベルまで小さくなりました。
(臭みが消えることは無かったです。)
「おめ~、優しいだなぁ~オラの嫁さんになってくれぇが?」
「あはははは、それはちょっと……。」(^ ^#)
まっぴらゴメンです! 

「ナナちゃん終わった?」
「あ、はい。」
 私たちはお店側に戻ります。
オーク男さんには体に大きな亜麻布を巻いて、服の代わりとしてもらいました。

「いったい何があったの?」
「この人が何もしていないのに色々と虐められていたんですよ。」
「ンだ。このちっこいのが助けてぐれなげれば、オラは殺されていたがもしれねぇ。
………おめーメンコイだな。オラの子生まねぇが?」
 レイさんの美貌を見て興奮したのか、話の途中で話題が切り替わります。
 亜麻布を撒いただけの簡易服も、股間の辺りがもっこり。
オーク族は好色とは聞いていますけどココまでとは…。
「い、いえ、今はそんなことを言っている場合では……。」
目のやり場に困ったレイさんが、赤面しながらしどろもどろに答えます。
「はいはい、話戻しますよ~。何であんなことになったんですか?」
オーク族の『すけべぇ』さに呆れつつも無理やり話題を引き戻しました。

「ここら辺りはどこへ行っでも、こんな調子だど。
オーク族というだけで忌み嫌われ、石を投げつけられるだ。」
 まぁ、世界情勢的にはそうなってしまいますよね。
「そもそも貴方はなぜこの街に?」
 レイさんが丁寧に聞きます。
 普通は敵対している国などに足を運ぶはずがありません。それなりの事情があると見たのでしょう。

「オラはイブラヒムというだ。
今、オラの国では戦争の気運が高まってるど、でもオラは戦(いくさ)は好きでねぇ。
戦闘訓練をサボっていたら皆から非国民呼ばわりされで国に居れなくなったど。」
 話は良くある村八分でした。
とくにオーク族は全体主義の種族です、個人より部族や国が優先されるので、異端は粛清対象なのでしょう。

「これって、オーク族が同盟のどこかの国と戦争をする準備をしているということでしょうか?」
「おそらくね。それがどこかは分からないけど……。」
「国境を越えてとにかく西へ進んだげど、人間たちはオラを見ると
侵略者だの臭いだのといっては除け者にするだ。まどもに宿もとれねぇ。」
 まぁ、敵対する地域ですから当然ですかねぇ。

「なるべく拒絶されないところへど、進むうちにココにたどり着いただ。」
「メタトロンは、各方面から訪れるキャラバン隊の中継地ですからね。」

 帝都ミカエルの南に位置するメタトロンは、帝都からのキャラバン隊が、
東、西、南の三方へ行くときには必ず通る中継の要所なので、
いろんな種族が立ち寄ります。偏見も比較的薄いのです。

 そもそもメタトロンという街自体、移民が集まってできた経緯があるので、
住民も異種族の割合が比較的多く、おかげで私やマルコルさんのようなドワーフ族でも
普通に商売ができるのです。これは人間が領主として治める都市としては珍しいことなのです。

「オラは思うだ、なぜ人間はオークといがみ合うだ?オーク族が馬鹿だからが?
人間たちは色々条約を持ちかけてはオラたちの領土を奪い取っているだ。
侵略者は人間の方だど、オラたちが怒るのも当たり前だ!」
 イブラヒムさんは声を荒げますが、これは一般オーク族から見た意見でしかありません。
事はそんな単純な問題ではないのです。

 実際は、あまり肥よくではないオーク族の国は国土面積こそ広いものの食糧事情が乏しく、
なおかつ人口だけは多いので 人間側の土地……つまり隣接しているミカエル連邦の国家に
無断で移民が流入していることが問題になっているのです。

 大陸東端にあるオーク族の国は、国境西側の面を多数のミカエル連邦の都市国家と隣接しています。
その殆どでオーク族の侵入が進んでおり、連邦側はそれをオーク国側に警告。
 しかし、オーク政府は多すぎる人民をコントロールし切れておらず、
実質歯止めをかけることができていません。
 オーク政府側としても事を荒立てたくないので、違法で移民したものへの排除は黙認する
という協定を結んだのです。

 当然すべての国境線は違法移民と国境警備隊との小競り合いとなります。
 阻止しても阻止しても押し寄せる移民。
連邦側もシビレをきらし、オーク側の土地に監視の為の駐屯隊を置くことを提案。
緩衝地を設けることで小競り合いを未然に防ぐ狙いでした。
 オーク側も妥協案としてしぶしぶこの提案を受け入れたものの、
連邦の駐屯隊がまるで自分たちの土地であるかのように居座ることを不満に思うオーク住民から反発があり、
余計こじれた状態を生み出しているのです。

 小競り合いが戦闘に近い状態になっている箇所もあり、非常にキナ臭いようですね。
 反発して乱を起こしているオーク族はあくまで住民であって軍隊ではないので、
駐屯隊との戦闘ともなるとオーク側の被害は酷く、オーク族の首都イスラフェルでは
『条約の撤回を!』という声も多く上がっているようです。

 なによりこじれている原因の一つに、オーク族はあまり頭がいい方ではないので、
直情的に行動することが多いということと、人間側にもこれにかこつけて領土を拡張し、
利益にありつこうという汚い考え持つものが一部に居ることも事実。
 こうなるともはやどっちもどっちという状況で、どちらがより悪いのか裁定できないんですよね。

「その辺の問題は難しいわね。
領土問題なんて隣接している国なら大抵どこでも抱えている問題だし、
私たち個人ではどうすることもできないもの。」
レイさんの悲しい顔。

「そういえばドワーフ族もエルフ族と領土問題でモメてますし、
人間ともミスリル鉱山の採掘権をめぐって争ってますぅ。」
「隣接している国同士は大抵仲悪いけど、オーク族は数が多いし、
性格から話し合いがまとまらないことが多いから厄介ね。」
「オラたちは悪ぐねぇ!」

 オーク族の主張は終始こんな調子の感情論なので、会議を開いたところで
話がまったく進展しないのです。

 個人レベルの移民も、数が多いとそれはもう侵略なんですが、
彼らに悪気がまったくないのが困った所。
 ましてやいざ戦(いくさ)が始まると、捕虜を惨殺したり、
捉えた女の人を手当たり次第に乱暴して混血児を生ませるなど、
国際協定を守らないことがよくあり、良くない面も多いのですから
悪気がないでは済ませられません。

「とりあえず、オーク族に寛容な国に移住するしかないんじゃないでしょーか?」
「でも、オーク族に寛容な国ってあったかしら?」
「北のエルフ族はダメですね。容姿が自慢のあの連中は
『醜い・臭い』という理由だけでオーク族を嫌ってます。」

「ちょっと寒いけど南のミーア族の国はどう?」
「う~ん、この人根はいいから詐欺にかかりまくらないかな~。」
 口のうまいミーア族は商売が上手いことで有名ですが、詐欺師も非常に多いのです。
「オラ、寒いところはヤダど。」
 あぁ~もぅ、こんな時にワガママを!(==#)

「ナナちゃんの所はどう?西の方。」
「ドワーフ族ですか?
う~ん、国が離れているということもあって、拒絶するような雰囲気はないですね。」
 むしろドワーフ族は『土臭いとか、鉄臭い』といって嫌われるので共感すら覚えます。
 しかしほとんど交流がないので、実際受け入れてもらえるかどうか 確信は持てません。

「とりあえずそこを目指してみては?」
「でも、ここから大陸丸々半分の距離ですよ?そこへ行くまでの道中が大変ですよ!」

 当然今日のようなことが行く先々で起こる可能性があるわけですからねぇ……。
「オラ 体力には自信アルだ、距離は気にしねぇど。」
「いや~、私が言ってるのは距離の問題ではなくてですねぇ。」
「オぅ?」
 やっぱりよくわかっていないですぅ~。

「どこを目指すにせよ、武器はいるわよね?」
「それはまぁ、そうですね。」
う~む、早速商売につなげるレイさん。商魂たくましい~。

「あなた、ココへ来るまでに何か武器は持っていなかったの?」
「ブキ?棍棒を一つ持っていたけども、人間たちにへし折られてしまったど。」
「ひどいわね……。」

「何か安い武器をみつくろってはどうでしょう?」
「もちろんそのつもりよ♡」
「オラ金持っでねぇだ。」
「そんなのもともと期待してませんよ♪」
 イブラヒムさんの人の良さが分かるのか、レイさんがウインクします。
こういう時は太っ腹な方なのです!

「さっそく武器を選ぶとして、何か希望はあるかしら?」
「オラ、難しいのは苦手だ。簡単な奴にしてけれ。」
「簡単なのですか……。う~~ん。」

 実はこれ、結構難しい注文です。
 実際『簡単な武器』なんていうものは存在せず、
どれもちゃんと使いこなそうと思ったら、それなりの素養は必要です。

 ただの棒であるクォータースタッフでさえ、振り回すだけなら誰でもできますが、
棍法を身につけた達人はとんでもない強さを発揮します。
 これは武器の強さというより、扱う人の強さが武器の強さに乗算してそうなるのです。
 つまり、扱いがある程度できていないと『何を持たせても宝の持ち腐れ』ということです。

「こうなると『向いている武器を当てはめる』しかないわね。」
「はいな!」
 レイさんが最終手段を言い出します。
『練度がないなら体格やスタミナに合った武器を持つ』結局最後にはそれしかないのです。

 とりあえずお店の横……私の仕事場隣の広場へ移動すると、
一般的なショートソードとバックラーをイブラヒムさんに持たせてみます。
「ブフュフュ、オラこんな武器持ったことないだ♪」
新しいオモチャを与えられた子供のように喜ぶイブラヒムさん。
「とにかく振ってみてください。」

ビュン!ビュビュン!

体力には自信がある!と本人が言うだけのことはあり、ものすごい筋力とバネです。
 力比べでドワーフ族に対抗できるのは、大型サーペント族か、オーク族といわれるのも納得です。

「武器を振り回すだけでなく、防御も意識してみてください。」
 言われてバッとバックラーを突き出すイブラヒムさん。
脇を閉める防御ではなく、前に向かって盾を突き出したということは、
一応バックラーの使い方は知っているようです。
 それにしても、ズングリとしたメタボ体格だと妙に滑稽ですね。

「防御を突き出しても攻撃は単調にならないように!」
 レイさんの叱責が飛びますが、どうにも左右の連携というものが苦手なようで上手くいきません。
「こんな右と左で別々の動きなんてできねぇだ!」
 イブラヒムさんは突然そう叫ぶと、とうとう座り込んでしまいました。
 そしてかたわらにまとめた武器の山から大剣を見つけます。

「やっぱりオラはこういうデケェ武器が好きだ。」
 手に取ったのは、巨大な両手剣ツヴァイハンダーでした。
 しかし両手剣は普通『軍用』で、旅のお供には大きすぎ、持ち歩く者は非常に稀です。
携行しているのは行軍中の兵士か、移動中の傭兵さんくらいですね。

「ブキィ~、オラの好みだど♡」
 両手でグリップを持つと思いっきり振りかぶり まっすぐ振り下ろします。

ズドンッ!

 打ち下ろされた大剣は深々と地面に食い込みます。
人に当たったら間違いなく一刀両断です。オソロシヤ……

「オロ?抜けねぇだ!」
 そりゃそーです。両手剣はそうやって使うものじゃないんですよ もぅ!
「ふんぬ~~~!」
ボコッ、ズッで~~ん。
 勢いよく抜けた拍子にひっくり返りました。
この武器も やはり向かないようです。

 その後もロングソードや曲刀など色々な剣を試しますが、
もともと不器用なのか、どれもこれも持て余します。
「う~~ん、ここまでとはねぇ。」
 お客に最適な武器を見つけるのが特技の一つであるレイさんが、とても困った顔をします。
「やっぱりオラには棒切れしかねぇべか……。」
 イブラヒムさんはすっかり気を落としてしまいました。
「…………………………………………………………。」
 レイさんがジッと考えます。何かいい案でも浮かべばいいのですが。

 しばらく考え込んでいたレイさんですが、何かを思いついたのかポツリと声を上げます。
「ナナちゃん、八番のショーケースに入ってるアックス持ってきてくれる?」
 八番といえば、私が試作したアイデア武器が収めてある、イロモノ武器のケースです。
そこのアックスといえば……あッ!

「わかりましたです。」
 すぐさまお店の中へ跳んでいき、
ショーケースの中のアックスをつかんでとんぼ返り。
そのままイブラヒムさんに手渡します。

 形状はハンドアックスに分類される「手斧」ですが、
ヘッド部が片刃ではなく諸刃になっているダブルブレードアックスです。

 手斧というのは本来木を切ったり、削ったりという用途が基本の作業道具です。
その本質はやはり、武器というよりは 限りなく道具より。
 しかし、このダブルブレードアックスは完全に戦闘用で、
道具の片刃の手斧では絶対にできない『切り返し時に手首を返す必要がない手斧』です。

「これならどうですか?」
「ブヒ?」
 イブラヒムさんがハンドアックスを振り回します。

ブンッ…ブンッ!

「やっぱり!ヘッドの重さも気にならないようね。」
 レイさんの顔がパッと明るくなります。
 このダブルブレードアックスという武器は、
手首を返さずに切り返し攻撃ができる優れた武器なのですが、
ヘッドが重いため手首に負担が掛かり、普通の人にはなかなかあつかえる代物ではないのです。
 実際諸刃のハンドアックスというものは、戦闘用ではめったにお目にかかれません。
両刃の斧というものはほとんどが伐採のための道具で、両手で使うものが大半。
 かくいう私のコレも、面白半分で作成した武器だったのですが…
どうも今回はピッタリだったようです。

「これなら振り回しているだけでいいから簡単だど!」
 両手持ち用のダブルブレードポールアックスとなってくるとまた、
持ち方によって戦闘方法が色々あり難しいのですが、ハンドアックスならそれも関係ありません。
 筋力の高さが完全にトップヘビーでアンバランスな武器を最適なものにしているようでした。

 イブラヒムさんにピッタリの武器が判明したちょうどその頃、乾かしていた服も乾いたようです。
 綺麗になった服と革鎧を着込むと、こざっぱりとしたオーク戦士が誕生しました。
少々の食料を鞄に詰めてあげ、店から送り出します。

「オラこんなに親切にされだの生まれではじめでだ。」
「言っておきますけど、武器は貸し出すだけですよ!出世払いで返してください。」
 すでにお金を取るつもりは無いはずですが、レイさんはそんなことを言いました。
こうすれば生き抜こうとする力の助力になるからでしょうね。

「お支払いに来たときは、もっといい武器をこさえておきますよ~。」
 私もそれにのっかり、渾身のナナスマイルです!
 イブラヒムさんは何度も振り返り、手を振りながらメタトロンを後にしました。
「いつか戻ってこれるといいわね。」
「そうですねぇ。」
「お店の常連になっていただけると、もっとありがたいけどね♡」

「面白半分で作った武器が意外なところで役立つモンですねぇ。
今度はダブルヘッドダブルブレードポールアックスでも作ってみよ~かな~。」
「両端全部刃物って…、そんな持ち運びに困る武器作ってどうするのよぉ。」
 売れそうもない私の妄想武器を想像して眉間にシワを作るレイさん。

カラン、カラン。

 そこに見覚えのあるお客がやってきました。
「あの~~。午前中にナイフの名入れを頼んだものですが…。」
キャーーー、すっかり忘れてました!
「あわわわ、今すぐ拵えますので、後10ミニト(約10分)ほどお待ちを~。」
 全身全霊の最速細工!その日、早彫りの速度記録を更新してしまいました。
 ふーっ、危ない危ない!


【ナナちゃんコラム ~ハンドアックス~】
 手斧は武器というよりは、どちらかというと道具です。
 もちろん武器としても使えますが、切るだけなら片手剣の方がリーチがありますし、
扱いを心得ているのでしたら、剣特有の『攻防一体の柔軟な戦闘』も可能です。
 手斧は防御するには小さすぎますし、形状も受けるのに向いた形はしていません。
剣に比べればリーチも不足しているのでセットで盾がほしいですねぇ。

 逆に片手剣より勝っているのは、ヘッドの重さからくる切断力でしょーか。
 いろんな機能を求めると、長柄のバトルアックス(battle-axe)やポールアックス(pole axe)、
究極的にはハルバート(Halberd)になっていきますが、
これらはもう基本両手であつかう軍用武器ですから、旅のお供に持ち歩くような物ではなくなってしまいます。
 やはり汎用性を求めるなら手斧の方でしょう。

ここから武器としての斧の歴史と変遷をご紹介…と行きたいところですが、
元々道具ですので、弓以上にいつから使われているのかはわかりません!
調べようがないんでしょうね、
これをきっちり説明されている書籍はあまりない気がします。

また、一般的に斧は『蛮族の武器』のようなイメージを持たれていると思いますが、
これは時の権力者が作り上げたイメージであり、実際には盗賊はもちろん、
普通の一般市民から騎士にいたるまで、あらゆる地域・民族で使用されていますよ~。

 また、トマホークtomahawk)なども『投げる』イメージが定着してますが、
これも活劇(映画)等によるフィクションの影響です。
投げつけることもしますが、投げることが主な戦闘法ではありません。
 投げる斧というと、フランキスカfrancisca{フランシスカ(francesca)とも…}の方が、
投げることを前提とした形状をしていますね。

 もっともこちらも投げたらそれで攻撃は終わりですし、命中率も悪かったようで
盾を破壊するためとの名目ですが、簡単に投げたかどうかは疑わしいですねぇ。
わざわざ予備に別の武器を持つのでしょーか?

他に戦闘用の斧として有名なものはタバール/タバルジン(tabar/Tabarzin)や、
少し形は斧型から外れますが、ブージ(Bhuj)やバルディッシュ(bardiche )でしょうか。
ま、大体が片刃です。

また、今回のテーマである「両刃の斧」ならラブリュス(labrys)を外すことはできないでしょう。
ラブリュスはもともと道具としての斧からくる宗教的な象徴物(シンボル)で、武器ではありませんが、
近代でも宗教の多様性や女性運動の象徴のシンボルとして使われることもある両刃斧の代表格です。

閑話休題

 実はハンドアックス自体は、道具としては結構中途半端。
 手斧程度では大木を切り倒すことは困難ですし、
(大木を切り倒す斧は大体両手持ちの長柄です)
枝を払ったり、割った薪をさらに細かくするなら、鉈程度で十分です。

 ですが、剣にはないヘッドの重量による高い切断力を持つため、
戦場では戦闘用のハンドアックスというのは結構メジャーです。
チェインメイル程度の防具ならなら
その切断力で断ち切ってしまうこともある
くらいです。
 本編で私が作成しているダブルブレードの斧というものは
道具ではなく、戦闘を見越したつくりの手斧です。

 斧はヘッドの重量を活かして物を叩き斬る刃物ですが、
斧頭が重いだけに一度振ってしまうと、次の攻撃までの時間が敵に付け入る猶予を与えてしまいます。
 振り切ってしまうと逆に振り返すには『手首を返す』というスキができるのです。
 両手持ちのポールアックスなら、長柄を利用して、
風車切りのような使い方もできますが、片手斧ではそれもできません。

 手首を瞬時に返すこと自体、練習をしないと簡単にはできませんし、何より手首に負荷がかかります。
 これを解消しようとしたものがダブルブレード…諸刃仕様のハンドアックスなのです。
 振り切ってもそのまま腕を引き戻せば、威力は劣るものの
反対側の刃で連続攻撃ができ、スキをカバーできます。

 単に道具としての斧なら両刃である必要性はありませんし、
むしろ反対側の刃が危険で邪魔ですが、
武器としての斧なら、この両刃の斧というのは有効なのです!
 ただし、ヘッドの重量は増してしまうので、それなりの筋力と体力、肉体の頑強さは必要。
細身の戦士が振り回すべき武器ではありませんねぇ。


【あとがき】
今回は「オーク族は豚じゃねぇぞ!」と高度な突っ込みをしてもらうために作られたエピソードです。
日本ではオークというと豚の獣人ですが、
元祖であるトールキンの一連の物語では単に「醜い者」とされています。
日本のRPG感はTTRPGであるD&D(ダンジョンズ&ドラゴンズ)の影響下にあるので
大体これのせいですね。
(バハムートがドラゴンなのもD&Dからきてます。本来はベヒモスのアラビア語読み。)

ナナちゃんたちの世界のオーク族が、なぜ豚系種族なのかは実は理由があるのですが、
おそらくこのお話の中では出てくることはありません。
本編では使わない裏設定があるだけです。
(この世界の亜人種は大体できた理由を持たせてます。)


完全に話がそれてますね。(笑)
今回は斧がテーマなんですが、斧は道具でもあるためか、
きっちり武器として詳細にとらえた書物というのがなくて、
あまり深いうんちくがなくて非常に困りました。

どこの書籍でも蛮族の武器ではなく、一般兵士から騎士まで幅広く使った
ということまではわかるのですが、
「戦闘でどういう使い方をしたのか」とか、「どういう騎士が剣より斧を選んだのか、」
という点をしっかり指摘している本は、当方が知る限りではまだ出会っていません。

武器としての斧の説明内容が非常に薄く、あったと思ったら大体バトルアックスのことです。
バトルアックスは柄が長く、両手持ちで使うこともできるので片手斧とするにはちょっと抵抗があります。
完全な兵器ですので、もう農民兵が使うようなものではないですし…
何をもってバトルアックスとするのか、という定義すらあやふやです。

斧は戦場でたくさん使われたという割には、主に築城から施設破壊にも使えたという情報しかなく、
実際武器としての斧というのはよくわからないものでした。面目ない。
結局、武器にも転用できる便利な道具として、戦場に駆り出された農民が
普段使っているものを持ってきた物なんでしょうかね?
教えて詳しい人!


仕事の修羅場はまだ続いているので投稿ペースは落ちますが、
一応次回はヘキサギア ヘキサギア ガバナー ライトアーマータイプ:ローズの予定です。
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プロフィール

MITAKEN0

Author:MITAKEN0
F井県E市に生息中のキモヲタ。

好物は武装神姫、トランスフォーマー、LEGO、萌系フィギュア。
神姫NETの公式SS板でワンユニット師だった経歴を持つ。
無類の巨乳好き♡

なお、当ブログの映像、画像、文章等の
無断転載はご遠慮くださいな~。

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